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『会津士魂』(全13巻)早乙女貢

幕末の会津藩が薩長のいわゆる官軍に対して、賊軍と呼ばわれ朝敵とされながらも、最後まで頑強に抵抗し続けたのは史実の示すところです。本書はその会津藩主松平容保が動乱の京都守護職に任命されてから、鳥羽伏見の戦に破れ、江戸から会津落城へと終焉を迎える7年間を描いています。この7年間の記述には、時間のスピードが速かったり、緩やかだったり、時に前後しながらたっぷりと叙述されています。後半は会津のために命を落とした人たちを実に丁寧にかかれています。特に会津落城直前までの記述は第12巻、第13巻と2巻におよんでいます。さすがに読了までに、通勤読書で3ヶ月くらいかかりました。

歴史を描くのに、いわゆる歴史史観というのがあり、それゆえに面白いわけですが、本書はその点明瞭です。敗者の側、それも会津藩側からのみの視点です。時には奥羽越列藩同盟の同盟国にもやや厳しい批判的な箇所もあります。当然、薩長土にいたっては、武士どころか人ではなく、狂気に満ちた獣のように描かれるところもあります。とはいえ激越な調子にいつの間にか、それも一理ある、と思えてしまうところがこの小説のおもしろさです。もはや、客観的に傍観者でいることはゆるされず、否応なく共鳴するか否かを読者が問われてしまうようなところがあるのです。ですから、この作品になじめない人も当然いるでしょうし、まして明治国家が理想的な明治維新によって進められたと信じたい人にとっては、とても嚥下しがたいものがあると思います。

何が嚥下しにくいのか、それがこの本の主題である士魂と逆の、功利的であったり功名的であったりする薩長土、あるいはそれに吸い寄せられた諸藩からなるいわゆる西軍のあまりに世間の評価と対照的な面だからです。合目的であればそれでいいのか、いわば勝てば官軍が正しいのか、真っ正面から問われることになります。それにしても激越な調子は、少々面食らいますが。ただし、河井継之助などに対しては、功罪とても冷静に描いていて、納得させられるところもあります。河井のヒーロー的活躍ではなく、外見的苦悩と、長岡藩の外からはこう見えるのかという観点が、今年になって読んだ司馬遼太郎の『峠』と比較して面白かったです。

ここ数年で、いろいろな幕末の見方が出てきており、これまで明るみに出てこなかった史実などもきっと出てくることでしょう。手放しで明治政府が画期的というより陰翳の部分ももっと明らかになってくるにつれて、人物の評価も変わってくるのだと思います。それにしても、維新の立役者もばっさりときる辛口の本書の記述は、好悪が分かれると思います。天の邪鬼の私としては、ちょっと愉快なところもありましたが。熱烈なファンのいるいわゆる志士たちも志士どころかごろつき程度の書かれ方がなかなか小気味よさもあります。

さて、主題の会津士魂とは何か、は本書の中で繰り返し説かれるところなので、あえて抽出しません。
ただ、これだけは確かなのは二本松少年隊や白虎隊の少年たちの悲劇、そして数百人の老幼婦女が西軍に蹂躙されるのをおそれ、あるいは恥として自害して果てた事実があることです。このときの悲劇の様子も詳述されていますが、会津の人たちの行動規範が何であったかが、まさしく会津士魂であったということなのだろうと思います。また、いわゆる武士の情け、すらなく使者の埋葬をも許さなかったことや、その後の惨憺を知ると激越な表現もやむなしとも思われてしまいます。会津憎しの単純さで力押しにあたったことや、そこには何の思想もビジョンもなかったと思われる様子もさもありなん、とも思えてしまうのです。いずれにしても、敵が会津だったからこそ、明治政府もうまく乗り切ったということも、またいえるのではないでしょうか。会津人の素直さや潔さが後の世まで禍根を残さなかったともいえると思います。会津士魂とは、敵の子はまた敵といったような愚かな単純さではないと思われます。

ただ、朝敵と決めつけられるには、やはり首肯しがたい。それがこの本を読むと、いろいろな人が命がけで守るものとして訴えかけてくるような気がします。この本、会津に対してよい印象を持っていない人にはおすすめしません。もっとも、薦めても読まないと思いますが。ちなみに文庫本の表紙絵も作者が描いています。

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