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『北條龍虎伝』 海道龍一郎

ありそうで、なかなかない後北條氏、それも若き日の北條氏康を主人公に据え、氷龍(こおりのりゅう)として、片や焔虎(ほのおのとら)という異名で北條綱成を対比させながら描いていく。何となく漫画的というか、ヒーロー物語というか、とても読みやすいのだが、何となく今ひとつ深みが足りないような気がする。
北條家の三代目としての苦労とか、武将としての俯瞰的なもののとらえ方や戦略的な見方など、とてもわかりやすく描かれていて、そういう意味では大変よく描かれていると思うのだが、ところどころに陳腐な表現だな、と感じてしまったりする箇所があって残念。

たとえば祝言という章。武骨で直線的な綱成が氏康の妹蝶姫に思いを寄せ、氏康の計らいで二人が知らずに遭遇する場面。
-「……あ、ああ……身共は氏康様に呼ばれましただけで……あの……その、まさか蝶姫様がここにおられるとは露知らず……、つまり、その……追いかけてきたわけではなく……蝶姫様がここにおられるとわかっていれば、来ないようにいたしたわけで……いや、何の思惑があったわけでもなく……あ、あれ、俺は何を言ってるのだろう……」
という具合。ちょっと漫画的ではないだろうか。

-気が付くと、綱成は拳を握り締めて自分の頭をがんがんと殴りながら喋っていた。
という表現が続く。

それでもこの小説の会話スタイルになれてくると、ストーリーはわかりやすいいので引き込まれる。冒頭は三代目となった氏康の危機状態から始まる。今や義弟となった綱成が三千の兵で守る河越城は、古河公方、関東管領上杉氏らの兵八万五千に囲まれる。多勢に寡勢、和議を請えば、河越城だけでなく江戸城、相模までとられる危機。この危機にどう対応するか、というところで、物語は氏康の少年時代にさかのぼっていく。

そして、中途にややこしい鎌倉公方と関東管領の関係などを古老の語る物語として語らせ、北條家をとりまく歴史的背景をわかりやすく伝えるなど、読み手を配慮した工夫もある。
二代目氏綱がいかに父早雲の功績を子氏康に伝えていくかことも主題にしているのだが、この二代目というのは一般的に創業の初代ほどに目立たない。ところが、氏綱は目立たないながらも着実に北條の力をのばし、優れた人物であることがよく伝わる。三代にして、関八州に覇をなす、という早雲以来の覇業に向けて、戦国武将としての一面と民と義を重んずる領主としての一面を懊悩とともに描きながら、子の氏康もまたその命題を引き継ぐ所以に読者は引き込まれ、いつの間にか一緒に悩む。
初陣から河越城奪取など合戦もそれなりによく描かれている。

そして、物語は冒頭の河越城攻防のクライマックスへと進んでいく。河越夜合戦の顛末が語られる乾坤の章は、もうちょっと合戦を堪能したいような物足りなさとともに、物語は終わる。

全体として、戦国時代にあって、氏康の人となりは、かなりロマンチックで正義感の強い人物として描かれるが、同時代の武田信玄、上杉謙信と比べ、あまり語られることのない名君。北條氏康のさらなる人生もぜひ読んでみたいところだ。血縁で固めた支城ネットワークや小競り合いも含めた対抗勢力との軍事バランス、領地経営など面白そうな要素はたくさんある。また、有名な小田原評定から後北條氏滅亡にいたるまでドラマは満ちている。もっといろいろな書き手の手になるのを心待ちにしたい。


北條龍虎伝 (新潮文庫)北條龍虎伝 (新潮文庫)
(2008/12/20)
海道 龍一朗

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