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『大江戸曲者列伝 太平の巻』 野口武彦 

歴史の素顔はゴシップに宿る。林羅山以下、江戸時代に生きた人物をユニークな視点でつづった人物誌。短いページで、ひとりのエピソードを紹介した本書は庶民から公儀、遊女から犯罪人までどこから読んでも、文句なく面白い。
太平の巻のほかに、幕末の巻もあるが、こちらの方がどことなくバブル的で能天気で読んでいて楽しい。

くだらなさで傑作なのは、「スカトロ宴会」と題された水上美濃守の章。あまりに下品なので、紹介も憚れるが続徳川実紀に書かれているそうである。

また、「生涯実直」の章では、役人が昇進祝いに上役をもてなす場面で、みやげにもたされた菓子。
-旗本たちはブランド志向が強い上に、日頃から口も肥えている。森山孝盛の後で組頭になった永井久馬は、慣例通り初寄合を催したが、それがもとで同役たちから赤っ恥を掻かされる羽目になった。後から一人が、「土産にもらった羊羹はどうも鈴木越後ではないのではないか」と言い出し、もう一人が「そういえば拙者もおかしいと思った」と応じ、それから我も我もと同調した。餡漉しが粗かった、鈴木越後ならもっと細かくてあんな味ではないというのである。永井を座敷に呼び出し、皆で取り囲んで詰問した。
 永井は汗だくになって、実は予算の都合で「金沢丹後」にあつらえたと告白した。同じランクの一流ブランド店である。しかし一同は承服せず口々に責め立て、とうとう永井は畳に手を突いて謝らされた。
 これが天下の直参旗本の日常だったのである。

という具合に、よく時代の雰囲気を伝えてくれる。

「幕末のパラサイト」では、滑稽本にまつわる話から文政年間のようすをわかりやすく。
-江戸では《茶番の世代》がかたちづくられていた。(中略)
 この茶番の世代にとっては、笑いが社会との接点であった。どこにでも笑いのネタを探し求める。どんなことが起きてもまず第一に、笑いを取るチャンスと錯覚する癖がついてしまっていたのだ。

何か現代の話のような気もするが、次の章もそんな印象の「旗本のイジメ殺人」
新参者イジメが盛んだった江戸の旗本社会。
-登校拒否ならぬ登城拒否の症状を示す者もいて、「鯱病」(しゃちびょう)といったそうだ。登城口の見付門には鯱の飾りがある。それを見ると、「今日もイジメられるのか」と思って足がすくんでしまうというのだから、イジメの根はどうも江戸時代の昔から深いようなのだ。

深刻である。
ちょっとユニークなのは、「いつも万葉気分」の平賀元義。万葉の昔にあこがれるだけでなく、完全に万葉人になりきってしまった男。歌人である。歌だけでなく生き方も万葉。技巧をせず、直球勝負。恋の情念もまっすぐで直情型。ある意味、幸せな一生を送ったようだ。

最後にもうひとり。井関隆子。教養ある女性の日記を題材に、江戸時代のトイレや汲み取り事情に話が広がる。

いやはや、スカトロ宴会に始まり、最後は雪隠の話題になったところで、頃合いはよしというところでしょうか。やめにしたいと思います。なかなかに楽しく読める一冊でした。


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(2006/01)
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